解決事例
-過労死(脳・心疾患)-
被災者は管理職の仕事に従事して、突然、自宅で脳内出血により亡くなられました。
相談者は、長時間の仕事による疲労が原因ではないかと感じておられたようですが、半信半疑のまま労災と考えることができるかどうかを含めて、電話にて相談をしていただけました。
会社は、被災者が長時間労働による仕事が原因であるとは考えもしていなかったようで、ご遺族に労災の可能性があることなど何の説明もしていませんでした。
相談をお聞きして、自宅を出る時間や帰宅してくる時間、出勤状況などを勘案すると、脳・心臓疾患の労災認定基準を上回る程度の長時間労働に従事しておられたことがうかがえました。
そこで、慎重に調査活動を進めながら、最初は手元になかった労働時間に関する記録も確保することに成功しました。ここでも、どのような証拠をいかに確保するのかについて、弁護士の経験に照らして依頼者と協同で進めることが、効果的な証拠収集を行う上で、とても大切です。
それらの記録などから労働時間を算定し、労災認定基準を超えていることが判明しましたので、労基署に遺族補償年金の請求をし、無事、労災認定を受けることができました。
これにより、毎年、400万円を超える労災給付を受給することができ、幼い子供を抱えておられるご遺族の経済的基盤の確保を図ることができました。また、ご遺族自身、被災者が何よりも仕事が原因で亡くなったことを公に認定されたことがホッとしたと話されていまいた。
その後、会社とも示談交渉をし、労災給付とは別に約5000万円の解決金も得ることができたのです。
この解決金もご遺族の経済的基盤の確保にとって重要な意義があったことは言うまでもありませんが、会社自身が被災者の死亡について仕事が原因であることを認めていなければ、このような補償をすることになりませんから、この会社からの補償も、ご遺族のお気持ちにとても大切な意味をもつことになりました。
被災者は、二つの会社から雇用されており、それぞれ別の仕事に従事されていました。
被災者は長時間労働に従事されていましたが、労働基準監督署は二つの会社での労働時間を合算し、労災認定基準を超える長時間労働に従事していたとして、労災認定されました。
このように複数の職場や会社の仕事をしている場合でも、労災か否かの判断の場面では、労働時間は合算されますので、一方の職場・会社の労働時間では労災認定基準を超えないと思われる場合でも、あきらめることはありません。
なお、この事例では、その会社を退職した元同僚の方とコンタクトをとることができ(ご遺族とは直接面識があった訳ではありませんでした)、被災者の勤務実態をお聴きできたことがとても大切な意味をもっていました。
このように、最初は勤務実態が全く分からないように思えても、協力者や資料が見つかる場合がありますので、一度ご相談いただくことが大切かと思います。