疾病ごとの労災認定基準-過労死(脳・心臓疾患)-

1.平成13年12月「脳・心臓疾患の認定基準」のポイント

 現在適用されている、平成13年12月に出された脳・心臓疾患の認定基準のポイントは以下のとおりです。

  • 長時間の過重業務による疲労の蓄積を考慮する
  • 発症前6か月間を過重業務の評価期間とする
  • 長時間の過重業務を評価する際の労働時間の目安を示している
  • 業務の具体的負荷要因(①労働時間、②不規則な勤務、③拘束時間の長い勤務、④出張の多い業務、⑤交代制勤務・深夜勤務、⑥作業環境(温度環境、騒音、時差)、⑦精神的緊張を伴う勤務)や、その程度を評価する視点を示している

 それまでは、「異常な出来事(発症前24時間)」「短期間(発症前1週間)の過重業務」についての評価が重視されていましたが、6か月間という長期間の業務の過重性を評価することになったことが大きなポイントです。

2.対象疾病

 認定基準は、業務上の過重負荷によって発症しうる脳・心臓疾患を次の疾患に限定しています。

(1) 脳血管疾患
①脳内出血(脳出血)、②くも膜下出血、③脳梗塞、④高血圧性脳症
(2) 虚血性心疾患等
①心筋梗塞症、②狭心症、③心停止(心臓性突然死を含む。)、④解離性大動脈瘤

 ただし、認定基準によって判断される疾病としては、上記のものに限定されていますが、裁判では喘息死、てんかん発作、消化器かいよう等についても認められたものがあります。

3.基本的な考え方

 過労死は高血圧症、動脈硬化等の基礎疾病があるところに、業務による明らかな過重負荷が加わり、それによって基礎疾病がその自然経過を超えて著しく増悪し発症したと認められるときには労災と認められます。
もともと何らかの血管病変があって、それが仕事の負荷によって著しく悪化するという考え方です。

4.認定要件

 発症前に「業務による明らかな過重負荷」があったといえることが必要です。 次の3つの場合が定められおり、いずれかが認められれば労災認定されます。

①異常な出来事
発症直前から前日までの間において、発症状態を時間的および場所的に明確にし得る「異常な出来事」に遭遇したこと
②短期間の過重業務
発症前おおむね1週間に日常業務に比較して特に過重な身体的、精神的負荷を生じさせる業務に従事したこと
③長時間の過重業務
発症前おおむね6か月間に著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に従事したこと

5.要件①「異常な出来事」

評価期間:発症直前から前日までの間
【三類型】
  • 極度の緊張、興奮、恐怖、驚がく等の強度の精神的負荷を引き起こす突発的または予測困難な異常な事態(精神的負荷)
    ※列車運転手が轢死事故を起こした現場立ち会いの後に発症した事例など
  • 緊急に強度の身体的負荷を強いられる突発的または予測困難な異常な事態(身体的負荷)
    ※職場の火災事故の鎮火のために全力疾走して倒れた事例など
  • 急激で著しい作業環境の変化(作業環境の変化)
    ※その季節としては異常な猛暑下の屋外作業者の作業など

6.要件②「短期間の過重業務」

評価期間:発症前おおむね1週間
日常業務に比較して特に過重な身体的・精神的負荷を生じさせたと客観的に認められるもの

◆ 過重かどうかの具体的な判断方法

「特に過重」かどうか
 当該労働者のみならず、同僚労働者または同種労働者にとっても、特に過重な精神的・身体的負荷であることが必要とされます。ここでいう同僚労働者とは、「当該労働者と同程度の年齢、経験等を有する健康な状態にある者」で、いわゆる平均的労働者の他に、「基礎疾病を有していたとしても日常業務を支障なく遂行できる者」とされています。
時間的関連性
 発症に最も密接に関連を有する業務は、「発症直前から前日までの間の業務」が特に過重であると認められるか、「発症前1週間以内」に過重な業務が継続しているかどうかを判断します。
検討すべき負荷要因
 労働時間以外に以下のような点についても具体的に検討するとされています。
  • 不規則な勤務(予定された業務スケジュールの変更の頻度・程度、事前の通知状況、予測の度合、業務内容の変更の程度等)
  • 拘束時間の長い勤務(拘束時間数、実労働時間数、労働密度、業務内容、休憩・仮眠時間数、休憩・仮眠施設の状況等)
  • 出張の多い業務(出張中の業務内容、出張(特に時差のある海外出張)の頻度、交通手段、移動時間および移動時間中の状況、宿泊の有無、宿泊施設の状況、出張中における睡眠を含む休憩・休息の状況、出張による疲労の回復等)
  • 交代制勤務・深夜勤務(勤務シフトの変更の度合、勤務と次の勤務までの時間、交代制勤務における深夜時間帯の頻度等)
  • 作業環境(温度環境、騒音、時差等を付加的に考慮する)
  • 精神的緊張を伴う業務(「通達の別紙」に掲げられた具体的業務で、精神的緊張の程度が特に著しいと認められるものについて評価する)

7.要件③「長期間の過重業務」

評価期間:おおむね発症前の6か月間
※それより以前の業務については、付加的要因として考慮します。

「特に過重な業務」の考え方や検討すべき負荷要因は、短期間の過重業務と同じです。

ここでは、

  • 発症前一か月間ないし6か月間にわたって、1か月あたりおおむね45時間を超える時間外労働が認められない場合は、業務と発症の関連性が弱いが、おおむね45時間を超えて時間外労働が長くなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まると評価できる
  • 発症前1か月間におおむね100時間以上、または発症前2か月ないし6か月間におおむね80時間以上の時間外労働時間(週40時間を超える労働時間)があれば、業務との関連性が強いと評価できる

とされています。
 したがって、発症前1か月間に100時間の時間外労働が認められるか、発症前2か月間ないし6か月間にわたって、1か月あたりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性は強いとして、原則として労災認定されます。

※「発症前2か月間ないし6か月間に1か月あたりおおむね80時間を超える」とは、発症前2か月間、3か月間、4か月間、5か月間、6か月間について、そのいずれかの期間における月平均時間外労働が80時間を超えるということです。必ずしも6か月間の平均に限定されていないことに注意が必要です。

8.終わりに

 これまで、説明した認定基準の内容をフローチャートにすると以下のとおりです。

脳・心臓疾患の業務起因性の判断フローチャート

 上記3つの要件のうち、最も多いケースは③の長期間の過重業務です。
過労死事件では、労働時間を立証することが最も大切な要素になります。労働時間を示す資料の収集には工夫が必要ですので、まずは専門の弁護士に相談してください。
 もっとも、この労働時間の基準は、あくまで行政内部の通達の基準です。訴訟では時間外労働が平均80時間時間を超えない事案であっても、他の負荷要因を総合判断して、過重性があったと認められているものがありますので、あきらめずに相談して下さい。

  

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